校長先生日記8月編

校長の三輪です。

 

夏休みが明けましたが、「危険な暑さ」と言われる酷暑の毎日が続きます。
国連のグテーレス事務総長が「地球温暖化の時代は終わった。地球沸騰化の時代が到来した。」とコメントしましたね。皆さん、特に登下校の際にも水分補給をしつつ、何とか乗り切っていきましょう。

さて、ひと月ほど前のことになりますが、7月30日(日)、『第20回太平洋戦争体験者のお話を聞く会』が下諏訪総合文化センターで行われました。

この会は、諏訪地域の住民でつくる同名の団体が、毎年夏に戦争体験を語り継ぐ催しとして開いてきましたが、戦争体験者の高齢化で「語り部」の確保が困難となり、ついに20回目の今回を最終回とすることになったそうです。最終回の今回、若い人の参加をぜひ、ということで、本校に声がかかりました。1年生が4名手を挙げ、当日の受付や講師対応等のお手伝いをしてくれました。

当日は、現代史研究家の大日方悦夫さんによる『「満洲移民」が問いかける歴史~なぜ人々は大陸に渡ったのか、そして悲劇に遭遇したのか~』と題する講演と、シンガーソングライターの清水まなぶさんによる『過去から学び未来へ受け継ぐ平和と希望』と題する歌と語りの二本立てのプログラムでした。

 

大日方さんの講演では、満洲移民の実態は政治的・軍事的国策であったが、表向きは経済政策を装い、公募としながら半ば強制的に、優遇措置をちらつかせ、村長が「分村移民」を決断せざるを得ないように仕向けたものだったことが、資料を交えて説明されました。長野県からも約3万7千人(開拓団全体の12%にあたる、もちろん全国1位)が渡満し、その43%にあたる1万6千人が犠牲となりました。講演終了予定時間が来てしまい、大日方さんは「実はこっちが本題でしたが」と、『満洲分村移民を拒否した村長』というご自分の著書を紹介されて締めくくられました。

 

清水さんの講演では、祖父の戦争体験を聞いて、それを『回想』という歌にしてリリースしたことをきっかけに、長野県内77市町村をすべて回り、戦争体験を聞き取ろうと決意、2015年から約3年かけて実行したことが語られました。聞き取った戦争体験を、戦争を知らない清水さんが語り継ぐことで、戦争体験を未来につなぎ、平和について考える『回想プロジェクト』を全国で続けておられるそうです。その清水さんの聞き取った話の一つ、原村在住の樋口さんという方の満洲での体験が、『こはるさんのこもりうた』という絵本になったことが紹介されました。

 

会の終わりに、司会者が運営を手伝った本校生を会場全体に紹介、大きな拍手が送られました。やはり、こうした場に高校生がいて、経験を共有することそのものが、社会にとっての希望なのだと感じます。

すると、一人のご高齢の男性が、4人の所へ急ぎ足で歩み寄り、一冊の絵本を手渡しました。それはなんと『こはるさんのこもりうた』で、男性は樋口さんご本人だったのです!関連の新聞記事が貼り付けられ、蔵書印も押されて大切なものに違いないその絵本を、本校にプレゼントしてくださったのです。

著者の清水まなぶさんがその絵本にサインしてくださいました。

 

絵本は今、本校図書館にあります。多くの皆さんに手に取って読んでいただきたいと思います。

戦後78年。戦争を知らない私たちひとりひとりが、何か語り継ぐものを見つけませんか。